クラウドサービス、データ活用、業務の自動化。
企業活動の中に、デジタル技術を取り入れる動きが広がっている。
ただ、それは何か新しいものに飛びつく話だけではないのだと思う。
背景には、もう少し切実な事情がある。
- 業務負荷の増加。
- 人材不足。
- 長年使ってきたシステムの老朽化。
どれも、すぐに会社を止めるものではない。
けれど、放置していると、日々の業務のあちこちに負担として現れてくる。
- 確認に時間がかかる。
- 担当者に聞かないと分からない。
- 同じ情報を何度も入力する。
- ミスを防ぐために、さらに確認作業が増える。
- 忙しい人に、仕事がますます集まっていく。
会社は回っている。
でも、確実に重くなっている。
- 日々の業務が回りにくくなる。
- 特定の人に仕事が集中する。
- 確認や転記に時間がかかる。
- 取引先から求められるデータ連携や、新しい業務対応に遅れが出る。
そうなってから慌てて動くと、選択肢は狭くなる。
だから、そろそろデジタル活用を進めたい。
そう感じるのは、とても自然なことだと思う。
一方で、多くの会社では、デジタル活用が思うように進んでいない。
理由はいくつもある。
その中でも大きいのは、古いシステムと人材不足です。
- 長年使い続けてきた基幹システムは、外部との連携が難しいことがある。
- 改修しようとしても、費用がかかる。
- 業務の変え方も考えなければならない。
- そもそも、今のシステムを分かっている人が限られていることもある。
また、ITやデータ活用を担える人材を、すぐに確保できる会社ばかりではない。
育成したくても、日常業務に追われている。
新しいことを考える余裕がない。
だからこそ、いきなり大きな事業改革を目指さなくてもいいのだと思う。
まずは、日常業務の見直しから始める。
- 紙やExcel、個別システムに分散している情報を整理する。
- 必要なデータを確認しやすくする。
- 目視確認や集計作業などの定型業務を、少しずつ自動化する。
それだけでも、
- 業務のムダや重複は減らせる。
- 残業削減につながることもある。
- 人員配置を見直すきっかけにもなる。
日常業務の効率化は、事業環境に対応するための土台そのものではない。
けれど、その土台を整えていくための入口にはなる。
では、具体的にどのように進めればよいのか。
ここで大事なのは、いきなりシステムを選ばないことだと思う。
デジタル化は、システム選びの前に考えることがある。
まず、「何のためのデジタル化か」を少し絞る
「デジタル化したい」という言葉は、思っているより大きい。
- 売上を伸ばしたいのか。
- 業務を楽にしたいのか。
- 顧客対応を早くしたいのか。
- 属人化を減らしたいのか。
- 将来の人手不足に備えたいのか。
同じデジタル化でも、目的によって進め方は変わる。
たとえば、社長は「営業力を高めたい」と思っている。
一方で、現場は「入力の二度手間を減らしたい」と思っている。
管理者は「最新の数字をすぐ見たい」と感じている。
どれも間違っていない。
ただ、全部を一度に満たそうとすると、話がぼやける。
最初に必要なのは、立派な方針ではなく、目的を少し絞ることなのだと思う。
今の仕事の流れを、思っているより丁寧に見る
次に見るべきは、今の仕事の流れです。
- 受注はどこから入るのか。
- 見積は誰が作るのか。
- 在庫はどこで確認するのか。
- 請求まで、どの情報が何度動くのか。
ここを追っていくと、いろいろな声が出てくる。
「同じ内容を何度も入力している」
「担当者によってやり方が違う」
「このExcelは誰が直しているのか分からない」
「顧客とのやり取りが個人のメールに残っている」
こうした声は大事です。
ただ、そのまま並べただけでは、まだ課題とは言い切れない。
- 業務の流れが悪いのか。
- システムが合っていないのか。
- 役割分担が曖昧なのか。
- そもそもルールが決まっていないのか。
ここを分けて見ないと、整理したようで、混乱は残る。
ITの話に入る前に、使えるデータがあるかを見る
デジタル化というと、どうしても道具の話になりやすい。
- AIを使えないか。
- クラウドにした方がいいのではないか。
- 他社が入れているシステムは何か。
もちろん、それも気になる。
けれど、その前に見たいものがある。
必要なデータが、使える状態で残っているかどうかです。
- 顧客情報が古い。
- 商品コードの付け方が部署ごとに違う。
- 売上データはあるが、粗利や案件経緯とつながっていない。
- Excelの入力ルールが人によって違う。
- 紙やPDFに情報が閉じ込められている。
こういう状態のまま新しいシステムを入れても、思ったほど活用できない。
デジタル化は、情報をきれいに流すことでもある。
そのためには、まず情報の置き場と状態を見る必要がある。
ひとつの案に飛びつかず、いくつかの進め方を比べる
少し整理が進むと、いくつかの進め方が見えてくる。
- 請求書発行から効率化する。
- 営業管理から始める。
- 販売管理や在庫管理を整える。
- まず一部門だけで小さく試す。
どれも、あり得る。
ここで早く決めすぎない方がいい。
- 費用が安いから。
- 導入が簡単そうだから。
- 現場の抵抗が少なそうだから。
そういう理由も大切です。
ただ、それだけで決めると、計画が小さくまとまりすぎることがある。
その案は、
- 会社の目標に近づくのか。
- 顧客対応は良くなるのか。
- 社員の負担はどこまで減るのか。
- 将来の成長に耐えられるのか。
施策アイディアを比べて初めて、優先順位に意味が出てくる。
今のやり方をそのままシステムに乗せない
ここは、かなり大事なところだと思う。
- 今の申請ルートを、そのまま電子化する。
- 今のExcel項目を、そのままシステムに移す。
- 担当者ごとのやり方を、そのまま残す。
- 紙をPDFにしただけで終わる。
これでは、見た目はデジタルになっても、仕事の構造はあまり変わらない。
むしろ、古い不便さを新しい仕組みの中に閉じ込めてしまうこともある。
考えたいのは、今の仕事をどう写すかではない。
- どこを標準化するのか。
- どこに人の判断を残すのか。
- 誰が入力し、誰が確認し、誰が使うのか。
- 一度入れた情報を、どこまで使い回せるようにするのか。
システムを決める前に、新しい仕事の流れを考える。
この順番が崩れると、業務とITが別々に動き始める。
「何がよくなったら成功か」を先に決める
デジタル化の計画では、最後に目標数値を決めたくなる。
- 見積作成時間を短くする。
- 請求ミスを減らす。
- 在庫確認の時間を減らす。
- 月次の売上状況を早く見られるようにする。
- 問い合わせ対応を早くする。
こうした指標は必要です。
でも、最後に飾りのように付けるものではない。
- 何が良くなったら、前に進んだと言えるのか。
- どの水準まで行けば、効果があったと言えるのか。
- いつ、誰が、それを確認するのか。
ここを決めておかないと、導入後に困る。
「便利になった気はする」
「でも、何が変わったのかは分からない」
そういう状態になりやすい。
成功の見え方を先に決める。
地味だけれど、後から効いてくる。
外部に任せることと、自社で決めることを分ける
システム会社に相談することは大切です。
ただ、何も整理しないまま相談すると、話は製品や機能に寄りやすい。
- 何を外部に任せるのか。
- 何は自社で決めるのか。
- 社内の責任者は誰か。
- 現場の意見を誰がまとめるのか。
- 導入後の運用を誰が見るのか。
ここを曖昧にしたまま進めると、導入後に責任の置き場がなくなる。
システム会社は、システムを作ることはできる。
けれど、自社の仕事をどう変えるかは、会社側が決めるしかない。
外部に頼ることと、自社で引き受けること。
その線引きが、案外難しい。
導入計画は、システムの予定表だけでは足りない
導入計画というと、契約日、設定日、本番稼働日が並ぶ。
もちろん、それも必要です。
でも、それだけでは足りない。
- 業務ルールはいつ決めるのか。
- 現場への説明は誰が行うのか。
- 教育はどの範囲まで行うのか。
- 古い業務から新しい業務へ、どう切り替えるのか。
- 問い合わせやトラブルは誰が受けるのか。
- 効果はいつ確認するのか。
システムの導入予定だけでは、現場は動かない。
業務の変え方、社内の体制、教育、定着、評価。
そこまで含めて、ようやく実行計画になる。
導入して終わりではなく、使い始めてから見直す
使い始めてから、初めて分かることがある。
- 思ったより使われない機能がある。
- 入力負担が増えている。
- 必要な情報が取れていない。
- 顧客対応は早くなったが、別の確認作業が増えている。
- そもそも目指していた方向が、少し変わってきた。
だから、導入して終わりではない。
実際に使ってみて、事実を見る。
- 必要なら、計画を直す。
- 場合によっては、会社として何を目指すのかというところまで戻る。
デジタル化は、一度決めた計画を最後まで押し切ることではないのだと思う。
結びに
デジタル化という言葉は、どこか華やかです。
けれど実際には、かなり地味な確認の積み重ねです。
- 目的を絞る。
- 仕事の流れを見る。
- データの状態を確かめる。
- 進め方を比べる。
- 今のやり方をそのまま持ち込まない。
- 何が良くなったら成功かを決める。
- 外部に任せることと、自社で決めることを分ける。
- 導入後に見直す。
こうして並べてみると、派手な話はあまりない。
でも、この地味な順番を飛ばすと、あとで大きく迷う。
システム選びの前に、自社の仕事と向き合う。
少し遠回りに見えて、案外そこが近道なのかもしれない。
