ビジネスプランをグラフィカルに表すためのツール
9つの要素をブロックとして表現し、それらの関係やフローを示すことで、ビジネスプランの概要を把握することができます。
ビジネスモデルキャンバスは、新しいビジネスを立ち上げる際にビジネスプランを作成する際に使用されることが多いですが、既存ビジネスの改善や成長のためにも使用されることがあります。
ビジネスモデルキャンバスの用途
ビジネスモデルキャンバスは、次のような用途で使用されます。
- ビジネスプランの作成
- ビジネスプランの提示
- ビジネスプランの評価
- ビジネスプランの是正
- ビジネスプランのコミュニケーション
ビジネスモデルキャンバスの構成要素
9つの要素には
- 顧客セグメント:顧客グループを定義し、それらの顧客グループに対して顧客価値を提供する方法
- 顧客との関係:顧客とのやり取りの方法
- 顧客にもたらす価値:顧客に提供する製品やサービスが、どのような顧客ニーズに応えるか
- チャンネル:顧客に製品やサービスを提供するために使用する手段
- 収入の流れ:どのように収益を生み出すか
- コスト構造:企業が費やす費用
- 主な活動:企業が行う主要な活動・業務プロセス
- 主なリソース:企業が持っている人材、技術、財産などのリソース
- パートナー:企業が協力し合っているパートナー企業やサプライヤーなど
があります。
それらの要素が、どのようにつながっているかを理解することで、ビジネスプランの概要を把握することができます。
顧客セグメント:Customer Segments
顧客セグメントとは市場にいる消費者のうち年齢や性別・地域など特定の属性を持っている集団を指します。
顧客セグメントは「企業が価値を届ける相手であり、自社の顧客として位置づけた存在」です。
それぞれの集団に適したマーケティング戦略を適用することで、より効果的なマーケティングを実施するための戦略です。
顧客セグメンテーションには様々な方法がありますが、一般的には以下のような基準を使用します。
顧客の人口統計学的特徴:年齢、性別、教育歴、収入など
顧客の行動特徴:購入履歴、ブランド忠誠度、オンライン行動など
顧客の心理特徴:購入動機、顧客の嗜好、購入時の考慮要素など
顧客セグメンテーションをすることで、顧客グループごとに異なるニーズや行動パターンを把握することができ、よりターゲットに合ったメッセージやサービスを提供することができるようになります。また、顧客グループごとに異なる収益の潜在性があるため、最も収益性の高い顧客グループに焦点を当てることで、より効率的なマーケティング活動を実施することができます。
<例>
・20代女性、単身者、年収200万円以上
顧客との関係:Customer Relationships
顧客と特定の関係を築くための仕組みを指します。
「顧客を維持できる仕組みになっているか」「顧客側にメリットはあるか」をポイントに書き出してみましょう。
顧客との関係は、顧客に対して自動化された方法や人手での方法があります。
自動化された顧客との関係は、オンラインチャットやFAQなどのオンラインヘルプデスクなどです。
人手での顧客との関係は、カスタマーサポートデスクやカスタマーリレーションマネージャーなどです。
また、顧客との関係は、顧客のライフサイクルに応じて変化する可能性があります。
例えば、新規顧客との接触では、顧客の問題を解決し、顧客が満足してサービスを使用するように導くための努力が必要です。
一方で、既存顧客との接触では、顧客がサービスを使用し続けるために必要な支援を提供することが重要になります。
<例>
・店舗のポイントカード
リピート利用を促し、常連客を生み出すための仕組み
顧客が店舗を継続利用することで、店舗から割引などのメリットを受けられる
顧客にもたらす価値:Value Propositions
顧客にもたらす価値とは、顧客のニーズを満たすための製品やサービスを提供することにより、「顧客の抱える問題を解決してニーズを満たせるか」ということです。
商品やサービスそのものではなく、顧客が感じる価値や便益、メリットを指します。
同じ商材であっても顧客にとっての価値や便益は異なる場合もあります。
顧客にもたらす価値は、顧客セグメント、顧客プロファイル、顧客のニーズを考慮して定義します。
<例>
・レンジで温めるだけのパックごはん
「手早く簡単にお腹を満たせる」ことが顧客にとっての価値・便益
・最高級のブランド米
「美味しい」ということが顧客にとっての価値・便益
チャンネル:Channels
チャンネルとは、顧客に製品やサービスを提供するために使用する手段を指します。
「顧客はどのような経路で自社商品やサービスの購入・体験に辿り着けるか」を考えて、考えられる経路を改めて洗い出してみましょう。
チャネルは、顧客とのコミュニケーション、販売、配送などを含みます。
例えば、製品を販売する場合、チャネルには直接販売、ECサイト、電話販売、展示会などがあります。
サービスを提供する場合、チャネルにはオンライン、オフライン、電話などがあります。
これらのチャネルを設計するには、顧客のニーズや行動、競合環境などを考慮する必要があります。
チャネルを効果的に活用することで、顧客に製品やサービスを届けることができます。
<例>
・コンビニ店頭
・直接販売
・ECサイト
・電話販売
・展示会
収入の流れ:Revenue Streams
商品やサービスの提供価値が顧客に受け入れられた結果として、収益を得る仕組みを指します。
商品そのものを販売して対価を得ることだけでなく、様々な収益構造が考えられます。
収入の流れには、販売、サブスクリプション、広告、ライセンスなどの様々なタイプの収益が含まれます。
例えば、製品を販売する場合、収益は販売価格と数量によって生み出されます。サービスを提供する場合、収益は月額料金や年間契約などの形で生み出されます。
収入の流れを設計する際には、顧客のニーズや価値、コストなどを考慮する必要があります。
また、収入の流れを変更した場合にどのような影響があるかも検討しなければなりません。
複数の収入の流れを持つことで、リスクを分散し、収益性を向上させることができます。
<例>
・駅で配っている無料の求人雑誌
顧客から代金を受け取ることはない代わりに、掲載企業から広告費を得ている
・オフィスの複合機
本体のリース料は抑えて、消費財であるトナーの交換費で収益を得ている
コスト構造:Cost Structure
コスト構造は、ビジネスモデルがどのように費用をカバーし、利益を生み出すかを示します。
コスト構造には、人件費、資材費、広告費、研究開発費などの様々なタイプの費用が含まれます。
例えば、製造業の場合は、原材料費、労働費、エネルギー費などが大きな費用となります。
サービス業の場合は、人件費、研修費、オフィス費などが大きな費用となります。
コスト構造を設計する際には、顧客のニーズや価値、収益ストリームなどを考慮する必要があります。
また、費用を最小限に抑えるためには、効率的な運用や取引先との契約、自動化などの工夫が必要です。
例えば、大手コンビニチェーンの店舗は、特定エリアに対して敢えて過密出店する戦略を取る場合があります。
これは、配送効率を上げることで商品の運送コストを抑える仕組みだと言えます。
コスト構造を最適化することで、収益を最大化し、利益を上げることができます。
<例>
・水道光熱費
・人件費
・広告宣伝費
・運送費 など
主な活動:Key Activities
主な活動は、ビジネスモデルが正常に機能するために必要な、核心的な活動を示します。
これらの活動は、顧客に価値を提供するために必要であり、例えば、製造、研究開発、マーケティング、販売、カスタマーサービス、物流などが含まれます。
主な活動は、顧客にもたらす価値やコスト構造、顧客セグメントやパートナーと密接に関連していることが必要です。
また、それらを効率的かつ効果的に実行する能力を持っていることも重要です。
自動化、アウトソーシングなどの手法を用いて主要活動を最適化することで、企業のパフォーマンスを向上させることができます。
<例>
・弁当屋…「(弁当の)製造」
・小売業…「(仕入れた商品の)販売」
・リサイクルショップ…「売買の仲介」
主なリソース(経営資源):Key Resources
経営資源は、ビジネスモデルが正常に機能するために必要な資源を示します。
これらの経営資源は、ヒト、モノ、カネ、技術的資産、特許やノウハウのような知的財産などが含まれます。
例えば、製品を販売する場合、経営資源には工場、設備、トラックなどが含まれます。
サービスを提供する場合、経営資源にはオフィス、車、技術開発チームなどが含まれます。
経営資源は、企業の主要活動に直接関連しています。
それらを有効に活用することで、企業のパフォーマンスを向上させることができます。
また、経営資源が不足している場合は、購入、リース、パートナーシップなどの手段を使って調達する必要があります。
<例>
・弁当屋
製造担当者、製造工場、厨房機器、事務所、製造ノウハウ、経営ノウハウなど
パートナー:Key Partners
パートナーは、ビジネスモデルが成功するために必要なパートナーを示します。
これらのパートナーは、サプライヤー、バイヤー、関連会社、アライアンスパートナーなどが含まれます。
例えば、製品を販売する場合、パートナーには製造業者、物流会社、販売代理店などが含まれます。
サービスを提供する場合、パートナーには関連会社、業界団体、専門家などが含まれます。
パートナーは、企業の主要活動や経営資源に直接関連しています。
それらを有効に活用することで、企業のパフォーマンスを向上させることができます。
また、適切なパートナーシップを組むことで、コストを削減し、リスクを分散することができます。
<例>
・「カレーフェス」「ラーメンフェス」など、テーマ性を持ったグルメ・フードフェス
複数の同業種の店舗が一度の場所に集まることで、一店舗では見込めないような集客を実現して、競合店同士が敢えて連携を取ることで、1つのビジネスモデルとして成り立っている。